[コンタクトセンターのカスハラ対策] Amazon Connectで通話中のカスハラワードをトリガーに、上司へ通知する仕組みを作ってみた

[コンタクトセンターのカスハラ対策] Amazon Connectで通話中のカスハラワードをトリガーに、上司へ通知する仕組みを作ってみた

Clock Icon2024.06.14

はじめに

Amazon Connectを使って、通話中にカスタマーハラスメント(カスハラ)のワードが出た際に、上司に通知する仕組みを作成してみました。

コールセンターでのカスハラは深刻な問題であり、オペレーターのメンタルヘルスや生産性に大きな影響を与えます。上司が迅速に状況を把握し、オペレーターのサポートや顧客対応の判断ができるよう、カスハラ対策の一環として、通話中のカスハラワードを検知して上司に通知する仕組みを作ってみました。

Amazon Connect Contact Lensの機能を活用することで、リアルタイムに通話内容を分析し、特定のキーワードやフレーズを検知できます。

今回は、通知先を上司、通知方法をメールに設定します。メールの場合、Amazon Connect Contact Lensの設定内で完結できます。

通知方法は、メール以外にもEventBridge経由でSlackやTeamsへの通知が可能です。

Amazon Connect Contact LensのEメールは、1日あたり500通の上限などいくつか制限がありますので、以下のドキュメントをご確認下さい。

https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/connect/latest/adminguide/contact-lens-rules-email.html#email-notification-limits

前提

Connectフロー作成

フローは以下の通りです。

[記録と分析の動作を設定]ブロックでは、[リアルタイムおよび通話後の分析]を有効にします。

メール通知のルール作成

Connectのコンソール画面のうち、左タブの[ルール]に遷移し、[ルールの作成]の[会話分析]をクリックします。

条件の設定は、以下通り行います。

  • 次の場合:Contact Lens リアルタイム分析が利用可能
  • 参加者がいたところ:顧客 (顧客が対象という意味です)
  • 話しています:日本語
  • キーワードまたはフレーズ
    • *使えないやつ*

カスハラワードとして「使えないやつ」を設定する場合、「*使えないやつ*」の通り前後にアスタリスク(*)を付けることで、「○○使えない○○」のように、「使えないやつ」の前後に他の言葉が含まれる発話も検知できます。しかし、「使えないやつ」だけでは検知されません。

例えば「キーワード」というワードを検知したい場合、以下のようなパターンを追加することで、「キーワード」が含まれるさまざまな発話を検知できます。

  • *キーワード*
    • 「○○キーワード○○」のように、「キーワード」の前後に他の言葉が含まれる発話を検知
  • キーワード*
    • 「キーワード○○」のように、「キーワード」で始まる発話を検知
  • *キーワード
    • 「○○キーワード」のように、「キーワード」で終わる発話を検知
  • キーワード
    • 「キーワード」単体の発話を検知

アスタリスク以外にも、リスト型やNumber型などが利用できます。詳しくは下記のドキュメントを確認して下さい

https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/connect/latest/adminguide/exact-match-pattern-match-semantic-match.html

次に、[アクションを定義]でメール通知設定をします。

メール通知先やメールの文面などを下記画面の画像を参考に埋めていきます。

  • カテゴリ名
  • Eメール通知を送信
    • 送信先
      • 通知先のエージェント
    • 件名
    • 本文

本文は以下を貼り付けてください。日本語の場合、キーボードで本文を日本語変換できなかったため、コピペで貼り付けました。

アラートとなるキーワードを検知しました。以下のコンタクト詳細からご確認下さい

コンタクト詳細: {{instance_url=$.instance_url}}/connect/contact-trace-records/details/{{$.contactId}}#realtime

- コンタクトID:{{$.contactId}}
- エージェントID:{{$.agentId}}
- キューID:{{$.queueId}}
- ルール名:{{RuleName=$.RuleName}}
- インスタンスURL:{{instance_url=$.instance_url}}

通知先のエージェントは、[ユーザー]からメールアドレスを追加ください。

試してみる

電話を掛けて、顧客側からキーワードを発言してみます。

通話中に顧客がキーワードを伝えた後、10秒弱でメールが受信されました。もちろん通話中にメール送信されます。

通話中にキーワードを数回伝えても、メール通知は1回のみでした。これは、キーワードが出るたびにメール通知されると煩雑になってしまうため、適切な設定だと言えます。

切断後、CCPから会話内容のうちキーワード箇所を確認できます。

また、コンタクト詳細からも、会話内容のうちキーワード部分が強調されて確認できます。

最後

キーワード検知やメール通知など、Amazon ConnectとContact Lensの機能内で完結できる点が優れていますね。

今回紹介した方法は、カスハラ対策の一例ですが、他にも様々な応用が可能です。

例えば、商品名や競合他社名などの特定のキーワードが通話中に出てきた際に通知を行うことで、マーケティングや営業戦略への活用も考えられます。また、オペレーターの応対品質向上を目的として、謝罪などの言葉を検知し、上司に通知することもできるでしょう。

ただし、カスハラ対策としてキーワード検知やメール通知を導入するだけでは不十分です。顧客の不満や怒りを招かないよう、コールフローの設計にも注意を払う必要があります。

例えば、10分以上待たされても電話に繋がらなかったり、オペレーターに繋がらずにSMS送信でFAQのURLが送られ問題解決できなかったりすると、顧客のフラストレーションは高まります。このような状況が続けば、オペレーターへのカスハラに発展する可能性があります。

顧客の立場に立ち、円滑なコールフローを設計することも重要です。その上で、万が一カスハラが発生した際にも速やかに対処できるよう、本ブログで紹介したようなキーワード検知とメール通知の仕組みを導入することを強くお勧めします。

本ブログが、コールセンター運営の改善とオペレーターのサポートの一助となれば幸いです。

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